「風のように生きる」を見つける
参加型コミュニティ

第4話 選ばれし者「幻影のエム」

「どうしてもひとつひとつをじっくりと考え込んでしまう私は、一生仕事ができる人間にはなれないんだろうなぁ。」

そんな風に考えてしまう美月は、アパレル会社でパタンナーをしている。晴れやかな舞台で活躍するデザイナーさんたちを影から支える役割の仕事だ。
そんなパタンナーの仕事をしていても、先輩からもっとテキパキと動いてねと日々注意されてばかりいる。
でも、デザイナーさんたちがおこしたスケッチを形にしていく仕事はとても楽しいし、できるなら一生関わっていきたい仕事だなぁと感じている。

「あなたのパターンは美しいね。たまにポカやるみたいだけど、いつか一緒に仕事をしてみたいわ。」

この会社に入社して1年ほど経った時に、トップデザイナーの川島さんから声をかけてもらったことが今でも忘れられないでいる。きっとお世辞で言ってくれただけの言葉だったんだろうけど、いつか彼女のパターンができる日を夢見て今日まで頑張っている。

「無理に決まってるんだけどね・・・」

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裏方として誰かを応援していたいという思いはもしかしたら誰にも負けないのかも知れない。

「エムさんてさー、いっつもちゃんと僕たちのこと見てくれてるよねー。」
ノマさんにそんな風に言われた時に、自分の本当の強みのようなものを知った気がした。

美月が仕事が終わってから楽しみにしているのが、コミュニティの人たちとのコミュニケーション。顔も見えないし、どんな素性なのかも良くわからない人たち。
でも、そこは美月が応援したいと思えるような人たちがいっぱいいて、自分の居場所のように感じている。
ただ自分のポンコツさは隠しきれないみたいで、このメンバーからも冗談まじりによくからかわれている。でも、それもここではなんだか気持ちいいと感じてる。

そしてここでの美月はエムという名で活動をしている。彼女の好きな月(MOON)から取ってつけたけど、とってもお気に入りの名前だ。

「そう、私は裏方でいいんだ。月のあかりすら私には眩しすぎる。私の存在は幻のようなものなんだ。」

どうしてそんな風に考えるのかは自分でさえも分からない。でも、今はそれが私の生き方、生き様だと思ってる。
そんな風に考えながら、目の前のパソコンにメッセージが届いているのに美月は気づいた。

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