ノマは、まだ今の状況はちゃんとと受け入れることはできなかったが、真剣に、そしてちょっとしたワクワクした気持ちを抑えつつ、ユノートルの話に耳を傾けた。
「みなさん、遠いところからお呼びだてしてすみません!みなさんと仲良くさせていただいていたユノートルも、ここにいるユノートルも同じ人物です。」
3人は訝しがりながらも、ちょっとずつユノートルの話に引き込まれていった。
「あっちの世界でも話していた風の谷のことなんですけど、実はこの世界の話なんです。ここが本当の風の谷です。」
ノマは、風の谷のことについてあれやこれやとユノートルと話していたことを思い出していた。
「本当のお話をしますね。私は風のユノートル。風の谷の一族を率いてます。」
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ユノートルから語られた内容はまるで漫画やゲームの世界のような話だった。
・・・この風の谷のある世界も、私たちが住んでいる世界と同じように多くの人たちが暮らしているという。
風の谷の世界で数百年前に「カガク」というものが生まれ、世界がどんどん変わっていったという。最初はその「カガク」の恩恵によって、たくさんの人は幸せに暮らしていたのだが、ある日、誰かがその「カガク」の持っている大いなる力に気づき、この世界に争いを生み出してしまったと。
風の谷はそんな「カガク」の力がおよばない辺鄙な場所にあったので、ここにいる一族は自然とともにある暮らしをおくっていたのだが、ある日、その「カガク」のある世界から複数の人間がやってきた。この風の谷にあるひとつの伝説を聞きつけて。
風の谷の一族はある伝説の守り人のような役割をもっているそうだ。そして、その伝説はこのように記されているという。
『それは心を映し出すもの。良き力にも悪き力にもなり、我々を救いもし、滅ぼしもすべしもの。』
風の谷一族の中のある一部の人間のみ、それを守る役割をもっていて、ユノートルもその役割を持った人間だという。
そして、その古より守っているものを「トークン」と呼んでいる・・・とのことだった。
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「と、トークンだってー!?」
3人は同時に声をあげていた。
「はい、トークンです。みなさん聞き馴染みのある言葉ですよね?」
そう、ユノートルと3人がコミュニケーションをしていたコミュニティこそが、トークンコミュニティだったからだ。
「あちらの世界のトークンと私たちが守っているトークンとは違いますが、なぜか不思議なつながりがあって・・・」
「私たち風の谷一族には不思議な力があって、概念を飛ばしたり具現化する力があります。概念を飛ばすことによってみなさんとお近づきになれました。」
ユノートルはそう言って屈託なく話を続けた。
「いや、風の谷一族というよりもこの世界の住人には昔からその力があったと思います。たぶん「カガク」によってその能力を使う機会が減り、多くの人がその力を失っていったと思います。」
「そんな能力なのですが、たぶんあちらの世界でも似たようなものがあったと思いまして・・・たぶん創造力とかクリエイティブとか言ってたような。」
そう話したユノートルの言葉に、彼ら3人は納得するような気持ちがでてきていた。
「あなたたち3人ならきっとこの世界も救ってくれるんじゃないかと思って・・・上手くいくか分からなかったけど実験してみました!」
「実験って!うまくいかなかったら僕たちはどうなってたんですか!?」
そう詰め寄るノマに、「さぁ・・・まー上手くいって良かったじゃないですか!」と返すとユノートルは続きを話し始めた。
「あっちの世界で話していたようにトークンにはいろんな可能性があると・・・おそらく「カガク」の世界の誰かもそう感じて、私たちのもとに来たと思います。おそらくはその力を悪き方に使うであろうと。」
「もちろん私たち守り人はそんな力に加担することなど出来ず、私たちの能力を使って追い返したのですが・・・私たち一族の中にそんな「カガク」と「トークン」に新しい可能性を感じている者がいまして・・・恥ずかしながら今「トークン」がその者によって持ち出され、この風の谷からはなくなってしまったのです。」
「私はその「トークン」を取り戻さないといけないと感じてます。その「トークン」にどんな力があるのかは分かっていませんが、今はその者の行動を止めなければいけないと感じてます。」
「そして、それを止めるのにはどうしても風の谷の一族以外から力を借りないといけない理由があって・・・」
3人は自分たちが選ばれた理由がなんとなく分かりつつ、この世界のことについて自分たちなりに想像を広げ、そのクリエイティブをいかんなく稼働させ始めていた。
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「その「トークン」を持ち出した人物・・・その名を「ユジーヌ・エル・ユノートル」といいます。・・・私の父の名です。」
3人はその言葉にさらに想像を膨らませていった。