『ノマさん、今日もラジオお疲れ様です。』
『ラジオ楽しかったですー!おやすみなさーい』
『また明日も楽しみにしてますねー!おー、シャンゼリゼー!!』
ふうっとため息をついた彼は、ギターを置きラジオの収録ボタンを押して配信を終えると、先ほど届いていたDMのことを思い出した。
「ユノートルさん?なんか風の谷のイベントのお手伝いを・・・とか話してたけど、そのことかなー?」
ノートパソコンを開いて届いていたDMを開くと、そこにはこんな言葉が書き記されていた。
『ノマさん、こんばんは。ちょっとノマさんのお力を貸していただきたい相談があってDMさせていただきました。
ご存知かと思いますが、今度、風の谷で大きなイベントがあります。風の谷のみんなで準備を一生懸命してるのですが、どうしても力が足りずノマさんのお力をお貸しいただきたい。この戦いはどうしても負けられないので、ぜひともご尽力いただきたく連絡させていただきました!』
DMをひらくとそんな風な言葉で始まっていて
「負けられない戦いって・・・なんか大袈裟だなー。笑」
そんな風に彼は面白がりながら続きを読みすすめた。
『それで、相談なんですけど、ノマさんは音楽とかやっていて、いつも素敵な歌を聴かせてくれたり、すごくいい音楽をセレクトしてくれたりしていて、すごい創造性がありますよね?ノマさんから発信される音楽たちが魔法のように、いつも僕の心を癒してくれてます。そしてノマさんには、何か心に秘められている情熱の炎のようなものも感じていて、きっと風の谷も救ってくれるんじゃないかと、そんな風に思ったりしています。・・・で、やってもらいたいことなんですけど。詳しくはリンク先に書いてあるので飛んでもらえば分かると思いますので、ぜひぜひよろしくお願いします!』
リンク先とともにDMはそう書き終えていた。
「なんだなんだ?風の谷を救ってくれるって?イベント大変なのかなー?・・・で、どうしたらいいんだろう?」
「まー、リンク先にいってみたら詳しくは書いてあるだろうから、そっちをチェックしてみるか!」
配信の疲れもあってか、ちょっとあくびをしながらリンク先のボタンを押すとパソコンの画面の中には、何か懐かしい景色が広がっていた。
「ん?なんだこれ?ここがユノートルさんの風の谷?・・・でも、何かちょっと不思議な感じだなぁ・・・なんだか日本ぽくないというか、ちょっと見たことあるようで実在してないような景色なんだけど・・・。」
そんな風に画面を見つめていると、なんだか急に眠気が襲ってきたらしく、彼はそのままゆっくりとゆっくりと、そして深い深い眠りに落ちていった・・・。
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「・・・ん?・・・あれ?・・・ここはどこだ?・・・確かさっきまでユノートルさんからきた動画を見ていたはずなんだけど・・・」
彼は目を覚ますと、見たこともないような景色がそこには広がっていた。いや、見たこともないような景色ではなく、さっきパソコンの中でユノートルさんからきた動画の中の景色そのものがそこには広がっていた。
「な、なんだ?こ、これは?・・・夢?・・・まるでゲームの世界にきたみたいだぞ?」
音楽も好きだが、ゲームも好きでよくやっていた彼は、直感的にそう感じていた。夢のように思えるけど、もっと実体をしっかり感じている。これは別の世界に入り込んでいるのではないかと。
「クェー!!」
後ろを振り向くと、馬だか、ヤギだか、ダチョウだか、見たこともないような生き物が大きな声で鳴いている。そしてその背中には一人の男が乗っていて、丘を降りながらこっちに向かってきて、目の前で立ち止まった。
「ま・・・まさか?これって?」
彼はそう呟きながら、それでも胸の高鳴りを抑えきれなかった。自分の姿がまるでゲームの世界の魔法使いそのものになっていたことに気づいた彼は、その男の口からでてくるであろうその言葉を確信していた。
「やぁ、ノマさん・・・いや、潜熱のノマさん。ようこそ風の谷へ!」