「せ、潜熱・・・ノマ・・・風の谷・・・、も、もしかして、あなたは、ゆ・・・ユノートルさん?」
頭ではこの状況が全く理解できていなかったのだが、創造性・・・いや妄想力であふれているノマは直感的にそう答えていた。
「さすがノマさん。話がはやい!直接会うのはこれが初めてですよね。ユノートルです。どうぞよろしく!」
直接会うのは初めてとか・・・そもそも今が夢なのか妄想なのか、それとも本当に別の世界なのかもよく分からないのに・・・ノマはそう思いながらも必死に今の状況を理解しようとした。いや、頭で考えても無理だろうと、ノマは今の状況を受け止めてそこから逆算して考え始めた。・・・そうか、量子論みたいなものだよな、頭で考えても分からないことは僕らの生きている世界にだっていっぱいあった、結果だけを受けてそこから逆算して現状を受け止めればよいと・・・
「って!そんなにすぐには受け止めれないっす!なんなんですか、この状況は?」
そう言ってノマはユノートルに詰め寄った。
「あ、ごめんごめん!ちゃんと説明しますよ、ノマさん。でも、あとちょっとだけ付き合って欲しいんだよ。だから僕の後ろに乗ってください!」
そう言われ、手を掴まれると、なんだか訳の分からない生き物の上にバイクの二人乗りみたいな形でノマは乗せられた。
「さぁ、飛ばしますよー!早くいかないとシニゾコさんとエムさんがやられちゃいますから!」
ん?・・・シニゾコさん?・・・エムさん?・・・どーいうこと!?
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(シニゾコ?どうしてその名前を知ってるんだ・・・)
シニゾコは驚いた顔をして、エムの方を振り返った。
「あ!ごめんなさい・・・以前ラジオでダチョウの卵のすっごく面白い話を聞いたのを思い出しちゃって・・・」
こんな状況なのに必死に説明しようとしているエムを見て、シニゾコはなんだかこのシスターのような女性にある人物の面影を感じていた。
「もしかして・・・エムさんか?」
そう呟くと、エムは知らない場所に放り出された不安が一気に解消されたこともあってか、矢継ぎ早に言葉を出し始めた。
「やっぱりシニゾコさん!?びっくりしたー!あのダチョウの卵の話めっちゃ面白かったですー!」
おいおい、この状況分かってんのか?という思いをいだきながらシニゾコも少し心が和らいでいるのを感じていると、一度吹っ飛ばしたはずの熊のような生き物がすぐそこまで近づいていて、二人に襲い掛かろうとしているのに気づいた。
「ちっ!今度はもう間に合わねー!!」
エムを守ろうとシニゾコは彼女に覆い被さるようにその身をモンスターの前にさらけだした・・・。
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「ぐっ!?ぐわー!!!」
大きな叫び声とともに、そのモンスターは塵のように粉々となって目の前から姿を消した。
そしてその消えた向こう側から、ダチョウのような生き物に乗った二人組の男たちがあらわれて、シニゾコとエムのところに近づいてきた。
(なんで俺の人生にはダチョウが絡んでくるんだ!?)
そんなお笑いのネタのようなことを思いながら、シニゾコは震えるエムを守るようにその男たちの動きに注意しながら彼らの言葉を待った。
「間に合ってよかった!シニゾコさん、エムさん。」
またこの名前を知っているヤツか。ダチョウのような生き物から降りてきた二人組の一人が話し出すと、シニゾコはようやく落ち着いて、その場に座り込んだ。
「初めまして、私はユノートル。そして一緒にいるのがノマさんです。まずはここにいる4人でこの風の谷で冒険の物語を始めようと思ってます。」
・・・呆然とする3人をそっちのけに、ユノートルは風の谷の話、そして彼らとの冒険の物語を楽しそうに話し始めた。